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第2章海上試運転結果の収集、解析

2.1検討の目的と概要

初期設計の立場から考えると、実船の操縦性能を船型主要目やフレームラインやプロファイルの形状、また、載荷状態から直接推定できれば大変に便利であり、実船の操縦性試験実績の解析から、この可能性を検討することが本研究の目的である。
初年度は広島大学のデータベースに蓄積されている800隻弱の実船の操縦性能実績に、本第223研究部会で収集した51隻分を併せて解析して、操縦性能と船型主要目との関連を統計的に推定することを試みた。しかし、こうして求めた推定式は操縦性能の傾向を把握する程度には役立つが、実用上に必要とされる精度の確保は困難と判断された。
造船設計の経験によると、同じ程度の主要目で大幅に性能が違う船の例は珍しくなく、操縦性能がフレームライン形状や船尾のプロファイルに大きく依存していることも明らかである。こうした事実から実用の推定精度を得るには主要目では表現できない船型要素を考慮した推定法を開発する必要があると考えられた。
第2,3年度はフレームラインの特徴を表現するパラメータをも導入した推定について検討した。この場合、船型と流体力、流体力と性能指標という2段階の関係が絡むことになり、本部会では別に船型から流体力を推定し、シミュレーションで性能を求めるという試みも検討されている。したがって、ここでは、従来の主要目にフレームライン形状を表すパラメータを加えて、直接に船型要素から性能指標を推定する方法を検討した。フレームラインを考慮する場合、従来から広島大学で収集されている多数のデータは資料がないために解析対象とすることが出来ないから。メンバー各社からデータを追加していただき、操縦性能実績を増やすと共に、船型主要目のみではなく、フレームラインの形状やプロファイルを表すパラメータも加えて、解析に供した。しかし、限られたデータから精度の良い統計的な推定式を得ることは容易でなく、特に重要な満載状態における10°Z試験のファーストオーバーシュート角については今後の課題となる。

2.2実船の操縦性能実績

操縦性設計を行う、あるいは計測した実績を整理する場合に、既存の実績の中で検討している性能がどのような位置を占めるかの把握が必要になる。この意味で、本研究で解析の対象としたデータベースには現在までの所、最も多数の実績が収集されているから、主要な操縦性能につき、船長をベースに性能実績の分布を纏めた結果を図2.1に示す。

2.3船型要目を用いた操縦性能推定法の検討結果

船型と操縦性能との関連を把握する上で、先ず、試みるべきは主要目と性能との関連である。本研究では船型主要目と性能との関連について検討を行ったが、この結果は実用の精度で性能を推定するという観点から見ると、特に、最も推定が必要とされる針路安定性に関連したZ試験のオーバーシュート角の推定については、精度的に不十分と判断された。
船体のフレームラインの形状と操縦性能が強い相関関係を持つことは、同じような主要目でありながら相当に違う操縦性能を示す多くの事例からよく知られている。特に、V型の船型の場合に針路不安定を示すことなどが知られており、針路不安定でトラブルを起こした船にはV船型が多い。また、プロファイルについても、逆G型、吊り舵でシューピースを持たない通常のマリナー型、それに船尾バルブがついた最近のバルブ付きマリナー型の船尾の順に針路安定性が低下することが知られている。
フレームラインが操縦性能に及ぼす影響を表現するために、操縦性能に関する実績とフレームライン影響を考慮して操縦流体力を推定する可能性を有する細長体理論による考察からフレームラインのUVの程度やプロファイルを違いを表すパラメータを選び、解析に供した。フレームライン影響を表すパラメータとして、S.S.2と9の位置の船体の横

 

 

 

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